転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


279 やった! 今日はみんな一緒だね



 イーノックカウへ来て4日目。

「ねぇ、お母さん。今日はどこ行くの?」

 昨日は雑貨屋さんとお菓子屋さんに行っただけで、どっこも見てないんだ。

 だから今日は、イーノックカウの街を見て回るのかなぁ? って思いながら、僕はお母さんに聞いたんだけど、

「あれ? 冒険者ギルドのお姉さんが、4日目の朝に来てって言ってなかったっけ?」

 そしたらキャリーナ姉ちゃんが、頭をこてんって倒してそう言ったんだよね。

 そう言えばルルモアさんがお母さんに、ポイズンフロッグってのをやっつけるのに使う弓と防具を渡すから冒険者ギルドに来てねって言ってたっけ。

 って事は、今日は冒険者ギルドに行くんだねって言おうとしたんだけど、

「違うよ、キャリーナ。冒険者ギルドで言われたのは4日目じゃなくって4日後の朝。つまり明日だよ」

 そしたらテオドル兄ちゃんが、キャリーナ姉ちゃんにそう言ったんだ。

「そっか。間違えちゃった」

 そう言って笑うキャリーナ姉ちゃん。

 それを見ながら僕は、言わなくってほんと良かったって思ったんだ。


「冒険者ギルドは明日の朝行くんだよね? だったら今日はどこ行くの?」

 明日の事は解ったけど、じゃあ今日は? って事で、僕はもう一回お母さんに聞いたんだよね。

 そしたら、みんなでお出かけするんだって。

「二日続けてお父さんやお兄ちゃんたちと別々だったでしょ? だから今日は家族みんなでイーノックカウを観光しましょう」

「みんなでお出かけ? じゃあさ、私、大神殿に行ってみたい!」

「イーノックカウ中央大神殿か。確かにあそこは観光地としても有名だから、観光するにはちょうどいいかもな」

 お母さんが街を見に行くんだって言ったら、レーア姉ちゃんが中央大神殿を見に行きたいって言いだしたんだよ。

 そしたらそれを聞いたお父さんがそれはいいって賛成したもんだから、今日はみんなで行くことになったんだ。


 イーノックカウの真ん中ってお貴族様やお金持ちの人たちが住んでるとこだから、その回りには外っ側とは別にもう一個壁があるんだよね。

 でね、中央大神殿は名前の通りこの街の真ん中あたりにあるんだ。

 でも、お貴族様を守るための壁の中なんて、普通の人は入れないでしょ?

 だからなのか、行ってみたらなんと中央神殿のあるとこだけは壁が街の真ん中の方にへこんでたんだ。

「あれ? お父さん。神殿のとこ、壁が無いよ」

 それにね、そのへこんでる壁も大神殿中央にある大聖堂のとこまで続いてるだけで、その奥には壁が無かったもんだから僕、びっくりしちゃったんだ。

 それにはお姉ちゃんやお兄ちゃんたちもびっくりしたみたい。

 だからみんなでお父さんになんで? って聞いたんだけど、

「この神殿は創造神様を祭ってあるからな。そんな所は天罰を受けかねないような悪人だけじゃなく、たとえ魔物でもここを襲おうなんて考えもしないだろうから壁なんか必要が無いんだ」

 そしたらこんな答えが返ってきたんだよね。

 そっか。悪もんだって魔物だって、神様からの罰は怖いもんね。

 それを聞いた僕たちは、それなら壁なんかなくったって大丈夫だねって笑ったんだ。


 イーノックカウの中央大神殿の入口にはね、真っ白な石だけで作ったおっきな門があるんだよ。

 でね、その門は中で折れ曲がるように道が作ってあるから、外から中が見えないようになってて、それを通り抜けると初めて大神殿の前にある綺麗なお庭を見る事ができるんだ。

「わぁ、お母さん。神様だ! 神様の石像があるよ!」

 でね、そのお庭の真ん中には3つの大きな神様の石像が建ってたんだよ。

 それを見つけてキャリーナ姉ちゃんは、もう大騒ぎ! それにお兄ちゃんたちやレーア姉ちゃんも、目をキラキラさせながら、その神様の像の方を見てるんだよね。

 当然僕も、いきなり現れた神様に大興奮だ。

「ここは創造の女神さまであるビシュナ様を祭ってる神殿なんだが、その中央にある大聖堂の両隣には戦いの神イドラ様と豊穣の女神ラクシュナ様の神殿もあるんだ」

 お父さんはそう言うと、あそこにある石像は右からイドラ様、ビシュナ様、ラクシュナ様を象ったものなんだよって教えてくれたんだ。

 でもね、それを聞いた僕たちは、あれ? って思ったんだ。

 だってさ、

「ねぇ、ビシュナ様って一番偉い神様だよね? なのに、何で像が一番小さいの?」

 レーア姉ちゃんが言う通り、3つの像は真ん中にあるのが一番小さいんだよね。

 でも一番偉い神様なんだから、普通は真ん中の創造の女神ビシュナ様の像が一番大きくないとおかしいんじゃないの?

 だからなんで? って、みんなして頭をこてんって倒したんだけど、そしたらお母さんがその理由を教えてくれたんだ。

「それはね、ビシュナ様が少女の姿をしている女神さまだからよ」

 前の世界では神様のお姿なんて、誰も見た事が無かったんだよね。

 でもこの世界の神様は前に何度か姿を現したことがあるから、そのお姿も実際に目にした人が絵とか文献とかにして残してるんだってさ。

「帝都の中央大神殿には実際にイドラ様のお姿を見た人が彫ったと伝えられている像があるんだぞ。それにな、ビシュナ様の像もラクシュナ様の像も、それぞれ実際にお姿をその目で見た人が彫ったとされている像が残っているんだ」

「この3体だけじゃなく、世界中の神像はすべて、それらの像や目にした人たちが書いた絵や文献を元に作られているから、それぞれの大きさもその尺度に合わせて作られているのよ」

 ビシュナ様は創造の女神様だから一番偉いけど、女の子のお姿をしてるから小さくって、その右っ側にあるイドラ様は男の神様の上に戦いの神様だからとっても大きくって強そう。

 でね、ふわふわの髪をしたラクシュナ様の像が、左っ側からとっても優しそうなお顔をしてビシュナ様にほほ笑みかけてるんだよね。

 強そうな戦の神様と優しそうな豊穣の女神さま、そしてその真ん中では二人の神様に囲まれた最高神である創造の女神さまが僕たちに向かって慈愛を込めたお顔で微笑んでくれてる。

「ねぇ、お母さん。ビシュナ様の像、私たちとおんなじで何だかお父さんやお母さんと一緒にお出かけしてるみたいだね」

 そんな3体の石像を見てたキャリーナ姉ちゃんは、お母さんを見上げながらにっこり笑ってそう言ったんだ。



 因みにこの神殿入り口にある門ですが、かなり豪華な作りで、ところどころに彫刻が施されています。

 なのでそこも観光名所ではあるんですが、その描写まで入れるとこの3柱(ルディーン君は知らないので3人って言ってますが、ちゃんとこの世界でも神様は柱で数えます)の神像までいかなそうだったので省いちゃいました。なにせ、私の頭の中では日光東照宮の陽明門並みに派手なものが浮かんでいたもので。

 後、門が目隠しになって中が見えなくなってるのは東大寺の中門がモデルになってます。

 東大寺って中門が目隠しになっているから、そこを抜けたら想像以上に大きな大仏殿が目に飛び込んできて初めて行った人はみんな驚くんですよね。


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